子供の愛着障害
いつまでも疲れがとれない、通勤電車で激しい動悸に襲われる、緊張すると下痢をする―こんな身体症状の背景に心の病気が潜んでいることがあります。
ストレスや心の病気による身体不調や異常行動を事例で紹介。
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「店に出かける時には、いつもジェニファーに『私から離れちゃだめよ』といわなくちゃいけないんです。
娘はいつも知らない人につかつかと近づいていき、困らせているんです。
どんな人にも話しかけるなんて、いいわけありません。
いつか、娘が大きなトラブルに巻き込まれるんじゃないかと思うと心配です」
8歳のジェニファーの気質が社交的だというだけの話かもしれません。
しかし母親は、娘はしょっちゅうこのような振る舞いをしていると話しています。
ジェニファーはいつも体を人に押しつけています。
行くところではどこでも自分に注目を集めようとし、そうしてもらえなければ無理やりにでも目立とうとします。
彼女は子どもがかかる二つの愛着障害の一つである「脱抑制型愛着障害」の症状を示している恐れがあります(もう一つは「抑制型愛着障害」)。
親子間の健全な愛情が、子どもの身体、情緒、心理面の発達の土台を形作ることは周知の事実になっています。
子どもは、このきわめて重要な愛情を人に感じさせる、先天的特徴を生まれつきもっています。
泣く(親に自分の欲求を知らせる)、笑う、目で親の姿を追う、手でものをグッとつかむこともこの特徴に含まれています。
乳児は母乳をもらい、抱いてもらい、おしめを変えてもらい、お風呂に入れてもらうことで緊密な情緒的関係を築き上げると、
次は親子の強く、安定した関係が形成されるまで、ますます複雑な愛情形態を発達させていきます。
こうした関係を結ぶことで、子どもは世話を受け、守られていると感じられるようになるだけでなく、他の人間との健全な関係を始め、形成できるようにもなるのです。
健全な愛情が子どもの発達期間に形成されなかったり、歪められてしまったりする理由は数多くあります。
親との別離、子どもの入院、親の身体や精神の病気、アルコールや麻薬などの乱用の問題、親からの虐待、時には親子間の単なる性格の不一致など、
あらゆる原因で子どもは愛情不足を感じてしまうことがあります。
愛情が完璧な状態になることはなく、親子間に完璧な杵を築き上げられる人間も一人もいませんが、それでも十分に満足のいく親子関係を形成すれば、子どもは勇気をもって社会に出て行き、他人と健全な人間関係を形成できるだけの安心感や親愛の情を学べます。
愛着障害は、
「快適さ、刺激、愛情への欲求を無視されたことに対する反応としての社会的関係性の障害」
と定義され、きちんとした世話をしてもらえなかったり、配慮が著しく不足していた子どもの中に発生しています。
子どもの身体的欲求が無視されたり、保護者と何度も別離がある時にも、子どもは家庭の内外で安定した愛情関係を形成できなくなる場合があります。
「脱抑制型愛着障害」は、子どもが過度に広範な人間関係を形成しようとする障害であり、誰かれ見境なく出会ったすべての人と絆を形成しようとします。
このような子どもの愛着はまったく人を選ばず、通りにいるすべての人に話しかけます。
恐らく危険人物になついてしまい、危険に身をさらすこともしばしばあるでしょう。
愛着障害のもう一つの型(「抑制型愛着障害」)は、これとはかなり異なる形で現れてきます。
この障害をもつ子どもは、うろたえ、途方に暮れ、びくびくしていて、不安に陥りやすく、用心しすぎのように見えるかもしれません。
対人関係では人々にひどく矛盾した反応を示し、恐ろしい出来事が起こるのを予測しているかのように、いつも警戒心を抱いています。
このような子どもをなだめることは難しく、時にはいわゆる「冷淡な用心深さ(相手をただじっと見つめていたり、尋常ではない異様な気配を視線の中に漂わす)」を示します。
愛着障害をもつ子どものほとんどは、5歳以前に人との奇妙な関わり方が現れます。
彼らはひどく攻撃的になったり、感情が抑えられなくなったり、注意力が維持できなくなったり、すぐ気が散ったり、欲求不満をすぐ爆発させたりすることがよくあります。
この特徴はADD(注意欠陥障害)の子どもとも似ています。
また、同じ言葉を繰り返したり、ろれつが回らなかったりという点で、言語障害の子どもとも類似性を示しています。
この子どもたちは自閉症の子どもと混同されることがありますが、
自閉症には愛着障害の子どもには必ず見られるひどく不健全な育児(トラウマを引き起こす別離、虐待、育児放棄、親の病気など)は見られません。
愛着障害の子どもはIQが平均より低い傾向があり、知的障害児と間違われることもあります。
愛着障害の原因は生物学や遺伝学的なものではなく「環境である」と断言できます。
普通、愛着障害の子どもは保護者の愛情不足、身体的・性的虐待や育児放棄のある家庭で育てられています。
またこの障害は、施設で育てられた子どもにも現れています。
しかし幸いなことには、以前の環境には欠けていた愛情に満ちた養育や刺激のようなプラス要素のある健全な環境に子どもを移すと、ほとんど例外なく症状はよくなります。
言い換えると、愛着障害はかなり治療が可能で、正常な状態に戻すことさえできるのです。
実際、他の重度の障害とこの障害を区別するのに利用されている診断基準の一つは、多くの愛着障害の子どもが、以前とは異なる、恵まれた環境で世話や養育を受けた時、
子どもたちのその症状が著しい早さで改善されるということなのです。
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