養子の子どもが直面する問題
第1章 里親制度の概念(言葉の概念/里親制度、職親制度(保護受託者制度)、養子縁組制度 ほか)/第2章 里親制度の背景(歴史的背景/宮城県牡鹿町の地域特性から見る背景)/第3章 里親・里子の現状と課題(全国の現状と課題/宮城県の現状と課題 ほか)/第4章 宮城県牡鹿町と埼玉県日高市の住民調査(牡鹿町と日高市の概要/先行研究の動向 ほか)/第5章 宮城県牡鹿町の里親及びその実子のインタビュー調査より
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「あんたなんて大嫌い! ここから出て行って、本当のママとパパを探すわ!」
「ママもパパも大嫌い!」と子どもに今まで一度も叫ばれたことのない親は恐らくこの世に一人もいないでしょう。
しかし子どもが養子の場合(そしてその子どもが自分は養子であることを知っている場合)、このような怒りをぶちまけられた親のショックはとりわけ激しくなるかもしれません。
以前と比べれば、養子ははるかに一般的なことになりました。
後ろ暗さもなくなり、養子の子どもはほとんど家庭や養父母に非常によく馴染んでいます。
しかし養子は、大人になっても引きずってしまう感情的な問題や困難を何度か現します。
そこには養子の子どもに共通する感情が介在しているように思えます。
それは「生みの親に愛されなかったから自分は育ててもらえなかった」という感情と「養父母にまだ十分に愛されていない(拒絶されたり、『元の状態に戻される』かもしれないという不安)」という感情です。
このような苦悩は、子どもを養子にした動機や葛藤(養子が肌で感じて、対応している葛藤)について十分検討してこなかった養父母のせいで、もっと深くなってしまうかもしれません。
養子にする年齢が早いほうが、子どもが情緒的問題(行動障害の形を取る問題)を抱える確率は少なくなります。
しかしこれは、新しい家族に入ってすんなり馴染めるかどうかは年齢によって決まるということではなく、
年長で養子になった子どもについては明らかにいくつか取り組まなくてはいけない問題があるということです。
最近では、養父母と生みの親がお互いについて何らかのことを知っている場合が多いという事実から、いくつかの困難が生まれてくるかもしれません。
現在、記録が自由に閲覧できるようになり、生みの親を探し出し、会ってみたいという養子は、以前よりこの願いが叶えられるようになりました。
その上、養子を迎える側も、片親、同性愛者など、以前よりはるかにバラエティーに富んでいます。
このような事実のすべてが(時にはプラス、時にはマイナスの)影響を養子とその家族に及ぼしています。
自分が養子だということに気づいているすべての子どもは、次のような共通の疑問を抱いています。
「どこからもらわれてきたのか?」
「なぜ捨てられたのか?」
「本当の親は誰なのか?」
「自分は捨てられるような悪いことをしたのか?」
「それとも本当の親が厄介払いしたくなるような悪い遺伝子があるのか?」
「今の養父母は本当はどれくらい僕を望んでいるのか?」
「本当の親と同じくらい愛してくれているのか?」
「前の親のように拒絶したり、捨てたりしないだろうか?」
「自分はどれくらい安心できる状態にいるんだろう?」
このような疑問からも、養子の子どもがある種の不安や自尊心の問題(特に自分を「悪い」、かわいらしくない、欠点があると感じる傾向)を抱えていることがすぐに明らかになります。
普通、養子の子どもは二重生活を送っています。
すなわち養子の家族との外面上の生活と「本当の」両親がどんな人だろうと想像する密かな空想の生活です。
時には想像が膨らんで、生みの親が王家の人間か映画スターになったりします。
またはその他の手段、特に養250子になった家庭やその生活と比較し、空想の家庭を理想化します。
心の中でそんなことを考えていることが、養父母に拒絶され、捨てられてしまうという感情を煽ってしまう一因になってしまうことがよくあります。
彼らは「本当の真実」はわかっていると思っています。
つまり、自分は養ってもらえるほど立派な人間ではなく、養子としてかろうじて受け入れられているにすぎないと感じているのです。
このような未解決の問題や葛藤から、この外面の家庭生活の中に問題が現実となって発生してくるかもしれません。
彼らは養父母にかなり怒りを感じているかもしれませんが、
それは実際には彼らに向けられた怒りではなく、生みの親が自分を捨てたことに対する怒りなのです。
子どもは「生みの親を探す」といって脅してみたり、本当の親と送っていたはずの生活を理想化したりするかもしれません(これは離婚した親の子どもが養育権のある親に感じる怒りや、一緒に暮らしていない親のほうに抱く理想化されたイメージと似ています。
養育権のある親は、実際にははるかに大きな原因や目的のある怒りを、いわば身代わりになって一身に受けているのです)。
養父母のほうも解決せねばならない矛盾をしばしばもっています。
彼らはまず第一に養子をもらうために、彼らに持ち上がってきた問題をすべて解決していなかったかもしれません。
自分たちに子どもができなかったことにずっと憤り(養子の子どもに無意識に伝わってしまっているかもしれない憤り)を感じている養父母がいるかもしれません。
子どもが生まれないことで、自分や配偶者に怒りを覚えているかもしれないのです。
外部からの非難や法的問題が、養子の子どもに最高の愛情を捧げることの妨げになっているのかもしれません。
妊娠できなかったため、自分には子どもをもつ資格がないと感じている養父母もいます。
このような未解決のままにしている悲しみを抱いている場合には、養子の子どもを異星人か侵入者と見なすようになってしまう危険性もあります。
養子の子どもが自分たちとは人種、民族性、文化、国籍などが異なっている場合、こうした傾向が増えてしまうかもしれません。
普通、このような葛藤は無意識に生まれてきますが(実際、養父母のほとんどは、子どもを養子にすることで自分たちはいいことをしたと頭では信じています)心の中に渦巻いている葛藤は、自分たちの生活や家に引き取った子どもに大きな打撃を与える恐れがあるのです。
養子の子どもが直面する感情的な問題は、養子を取ることで養父母に生まれてきた感情的問題と密接に結びついている場合が多いことに気づくことも大切です。
その上、養父母には、いつか生み親が子どもに影響を及ぼすかもしれないという不安(例えば子どもの攻撃的な言動は生みの親の遺伝かもしれないという不安)が加わってきます。
だから、多くの養子の子どもが自分の中に何か「おかしな」あるいは「悪い」ものがあると感じてしまうことは不思議なことではないのです。
養子の子どもに生みの親から遺伝した性格が現れてくることにたえず不安を感じ、結局養子の子どもを遠ざけざるを得なくなる養父母もいます。
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