いじめっ子といじめられっ子
第1章 「いじめ」にかかわる教育心理学的課題(文部省報告の基本的姿勢/「いじめ」問題対応の三側面 ほか)/第2章 よい子でありつづける子どもたち―いじめられる側の心理(いじめられる側の子どもを知る/いじめられる側の子どもの心を癒やす)/第3章 満たされない子どもたち―いじめる側の心理(いじめたくなる心理の背景(1)―安心感を求めて/いじめたくなる心理の背景(2)―子どもたちを支えるために)/第4章 いじめを助長する子ども・大人たち―傍観者と大人の態度(正義は心の声に従う―傍観者の問題/いじめにおける大人の問題)/第5章 悔しくて、悔しくて、殺してやりたい―「いじめ」カウンセリングの実際(悔しくて、悔しくて、殺してやりたい/いじめられた秋子さんへの心理治療過程)
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幸い、小学校の3、4年生になるまでに、ほとんどの子どもは争いごとを解決する主要な手段として喧嘩には頼らなくなります。
しかし中には、この年齢になってもいじめをやめない子どももいます。
あなたは近所や遊び場のいじめっ子が誰だったか覚えていますか?
誰かれかまわず脅していた子どもです。
あなたはその子と顔を合わせないように回り道して歩いていました。
悪夢の中にも出てきたこの背が高い、がっちりした子どもが誰だったか思い出せますか?
思い出せないなら、あなたは他の子どもからずっと避けられていたはずです(自分がいじめっ子だったことを覚えている人が何人いるでしょう?)。
あいにく、いじめ(無理やり相手に自分の要求を押し通す手段として腕力や脅しを利用すること)は、家族、両親、兄弟の間ではよく利用されている手段なのです。
しかし近所、学校、キャンプ、砂浜、遊び場など家以外の場所でも、いじめはごく日常的な(時には軽視できない)トラブルの種になることがあります。
年上か体格のいい子どもが、年下か、弱いか、またはおとなしい子どもをいじめるのが一般的ですが、いじめっ子は相手の自尊心ばかりでなく、お金や所有物も奪ってしまうことがあります。
いじめは暴行や性行為の強要といったもっと深刻な事件に関わってくるかもしれません。
以前より子どもが刃物などの凶器を手に入れやすくなっている時代には、いじめは殺人にさえ発展しかねません(一般には、いじめっ子は相手を脅すためだけだといわれていますが、そうとばかりは限りません)。
私たちはまずいじめられっ子のほうに同情を寄せる傾向があります。
しかし、いじめっ子のほうがいじめられっ子よりはるかに傷ついている場合が少なくありません。
いつも自分の支配下に置く犠牲者を探している、怖いもの知らずの目立ちたがり屋といわれている幼い子どもは、やがて正真正銘の行為障害をもつ青年となり、
大人になれば刑務所を出たり入ったりして過ごす犯罪者になってしまうことが多いのです。
いじめっ子は自分の家庭でいじめについて学ぶ傾向があります。
彼らは殴られてしつけられています。
子育てに暴力を利用すると家庭に冷たい空気が生まれ、しばしば夫婦や親子の間での家庭内暴力が端に繰り返されてしまいます。
このような暴力をいつも目にしていると、子どもは暴力や脅しが効果的な対抗手段であるという教訓を心に深く刻み込まれるばかりでなく、他人の感情などおかまいなしになってしまう傾向があります。
いじめっ子だと非難されている子どもと一対一で面談し、次に子どもの親と顔を合わせた時、私はこの事実にはっきり気がつきました。
家族同士で話し合いをさせている間、親がしばしば私につっかかってくるのです。
悲しい事実ですが、男子のいじめっ子(いじめっ子の大多数は相変わらず男の子ですが、ケイトリンは女の子の間でもいじめが増加していることを再認識させてくれました)は、見た目にはいぼっていて偉そうに見えますが、
不安を抱き、落ち込み、怒り、傷ついているのが普通です。
そしてこの感情はいじめっ子の親たちからもかなり伝わってくるのです。
さらに悪いことには、いじめっ子はなかなか自分の気持ちを話したり、自分の行動について理解しようとはしません。
彼らは怒りの感情に取りつかれ、それを他人にぶつけることで気持ちを晴らしているのです。
いじめられることで、その犠牲者はかなりひどい打撃を受けることがあります。
普通、いじめっ子はいじめられっ子を非常に慎重に選んでいます。
いじめられる子どもは神経質で、心配性で、不安を抱き、不安定な状態にあることが多いのですが、これはいろいろな意味でいじめっ子が抑圧しているのとまったく同じ感情を示しています。
いじめにあう子どもはすくんでしまうことが多く、相手にやり返すことができません。
そのため、繰り返しいじめの標的になってしまいがちです。
時が経つうちに自然と「いいカモ」だという評判が立ってしまい、新鮮な獲物を探しにやってくる新たないじめっ子に簡単に脅されてしまうのです。
このような子どもは自分の権利をきちんと主張する手段を学んでいないことが多く、しばしば人間離れしたレーダーをもつ近所のいじめっ子にどんな人間か肌で感じ取られてしまいます。
屈辱感のためいじめられていることを両親にも話せないかもしれませんが、いじめの苦痛を避けるため、身体症状や不登校という形で現れてくるかもしれません。
いじめっ子といじめられっ子は一皮むけば親類のようなもので、どちらも怒りに直面し、猛烈な不安感と絶望感に対処しています。
いじめっ子の場合は家庭で目にする怒りで自分まで怒りに取りつかれてしまい、実際に怒りを実行に移さなければ気分を晴らすことができません。
いじめられっ子の場合は、心の中に怒りを感じ、自分にやつあたりせずにはいられなくなります。
恐らく、いじめたり、いじめられたりする経験をまったくせずにすむ子どもはいないでしょう。
しかし普通はこのような経験が長期間にわたって心身を衰弱させるような影響を及ぼすことはありません。
しかし次のような場合は、いじめが深刻な問題に発展してしまう危険性があります。
・あなたの子どもが人に身体的な危害や障害を引き起こしてしまうほどひどいいじめっ子になった場合。
・学校をはじめとする外部の観察者が、あなたの子どものいじめを報告する場合。
・行動障害をもつ子どもに見つかるような、その他のぞっとするような怒りによる行動といじめが結びついている場合。
・あなたの子どもがいじめられるようになった結果、屈辱を恐れ、消極的で、気を滅入らせ、ひどく不安定で、神経質で、人を避けるようになってしまった場合。
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