子供の喧嘩
第1章 「いじめ」にかかわる教育心理学的課題(文部省報告の基本的姿勢/「いじめ」問題対応の三側面 ほか)/第2章 よい子でありつづける子どもたち―いじめられる側の心理(いじめられる側の子どもを知る/いじめられる側の子どもの心を癒やす)/第3章 満たされない子どもたち―いじめる側の心理(いじめたくなる心理の背景(1)―安心感を求めて/いじめたくなる心理の背景(2)―子どもたちを支えるために)/第4章 いじめを助長する子ども・大人たち―傍観者と大人の態度(正義は心の声に従う―傍観者の問題/いじめにおける大人の問題)/第5章 悔しくて、悔しくて、殺してやりたい―「いじめ」カウンセリングの実際(悔しくて、悔しくて、殺してやりたい/いじめられた秋子さんへの心理治療過程)
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「ママ!ジェニーがまたバービー人形で私の頭を叩いたの!」
6歳のマーガレットは、2歳の妹ジェニーのことで文句をいっています。
でも、喧嘩するにはジェニーはまだ幼すぎはしないでしょうか?あなたに2歳の子どもがいるなら、そうではないことに気づいているはずです。
ジェニーは生後18ヶ月で「喧嘩」を始めているのです。
しかしジェニーが異常なほど攻撃的な性格だというわけではありません。
どんな子どもでも喧嘩はします。
それどころか、子どもにとって喧嘩はごく普通の行為なので、精神医学の文献に一つの独立した項目として載せられることはごくまれにしかありません。
子どもが時々取っ組み合ったり、押したり、叩いたり、噛んだり、ひっかいたり、バービー人形で相手の頭を叩いたりして自分の怒りを伝えていることを、私たちはごく日常的な出来事と見なしているのです。
歩き始めの幼児の間の喧嘩は、普通おもちゃなどの所有物を「共有しよう」とする時に起こります。
乳幼児にとって共有するという概念はまだ馴染みがないのです。
恐らく自分の所有物であると認識しているものに対しては、とりわけ子どもの独占欲は強くなるでしょう。
他の幼児のおもちゃを許可なく使って、どこが悪いのかまったくわかっていないことも少なくありません。
それどころか、そのおもちゃを奪ったり、自分の手元においておこうとして、喧嘩になってしまうでしょう。
その後、様々な分離不安や、近所、遊び場、教室にいるよその子どもについてきちんと理解し、小学校に通うようになっても、子どもは喧嘩を怒りや欲求不満の主な捌け口にしています。
しかし小学校の2、3年生までには、子どもは自然と争いを解決する手段として取っ組み合いの喧嘩をしなくなります。
この年齢の頃から、子どもたちは自分の主張を通すには、相手を殴ったり、けったり、ものを投げたりするより、意見の食い違いを徹底的に議論するようになるでしょう。
ある程度なら喧嘩をするのは異常なことではありません。
しかし、特定の子どもに喧嘩を増やしてしまう条件がいくつかあるのです。
その条件とは、ほとんど例外なく多少問題のある家庭環境に関係しています。
家庭生活が無秩序で、崩壊気味で、とりわけ議論に勝つために家族の中で暴力が利用される時、子どもにとって喧嘩はやっても差し支えのない対抗手段であることを教える見本になり、
家庭の中だけでなく外でも喧嘩をするのは当然のことと思ってしまうかもしれません。
お尻を叩かれている子どもや落ち着きのない子どもは喧嘩が多くなります。
また、ほとんどの問題を腕力、脅し、罵声といった手段で解決されているのをいたるところで眺めている子どもにも喧嘩が増えてしまいます。
怪的虐待を受けてきた子どもも喧嘩が多くなります。
また恥をかかされたり、自尊心を傷つけられ、押さえつけられてきた子どもや、無力感を感じさせられるような扱いを受けてきた子どもも喧嘩が増える傾向があります。
つまり、家族の構造や子どもが接しているサブカルチャーを見れば、その子どもの喧嘩が多いか少ないかが明らかになることがよくあるのです。
マスメディア、とりわけテレビや映画の影響もあります。
そこでは暴力シーンがいたるところに登場してくるので、それがごく普通の出来事のように思えてしまい、子どもの暴力に対する感受性は鈍ってしまいます。
これも喧嘩を増やしてしまう原因といえるかもしれません。
喧嘩が注意や介入が必要とされる問題となるのは次のような場合です。
(1)喧嘩が自分の意思ではどうにもならずに繰り返され、子どもの苦悩や怒りの感情を表現するための唯一の手段になっているように見える場合。
(2)学校の成績や社会への順応性に影響を及ぼすほど、喧嘩が広い範囲に及んでしまっている場合。
(3)あなたの子どもが何度もいじめっ子またはいじめられっ子になっている場合。
(4)警察などと面倒を起こしている場合。
(5)放火、盗み、破壊行為、嘘などのもっと広範囲に及ぶ障害をあわせもつ問題や、不注意、過活動、衝動性のようなADD(注意欠陥障害)の症状と関連している場合。
(6)神経生理学的な問題と関連している場合。
(7)学習障害と関連している場合。
(8)子どもの喧嘩が集団化し、非行グループに加わるようになった場合。
非行グループの暴力が他の暴力より深刻な事態になるのは、多くの場合、他の非行集団に対抗するために死ぬ危険のある攻撃や凶器が利用されることが多くなるからです。
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