子供の心身症
本書は、わが国のすべての小児科医の方々に、自分たちが心身症の子どもたちへ対応することができる存在であることを認識して頂き、さらに、より深いご理解をして頂くため、また、既に心身症医療に携わっている方々には、ご自分たちの知識を整理して頂けるよう編まれた。
自閉症児を含む三人の子を育てる著者からの読めばきっと元気になる子育てメッセージ。
レビューを見る
「でもしかたがないんだよ、ママ、頭が痛いんだ!
ずっとめまいもしているし。
気分が悪いんだ。
お医者さんにも僕がどんな状態かわからないんじゃないかな。
お医者さんだってすべて知っているわけじゃないし」
9歳のハリーのいっている通り、
医者もすべてのことを知っているわけではありません。
しかし医者(児童精神科医をはじめとする精神医療の専門家)は、実際にハリーを悩ませている状態にしばしば出合っています。
それは「転換性障害」と呼ばれる、心のストレスが身体の病気へと転換してしまう障害です。
ハリーは実際に痛みを感じていて、両親はその医学的原因を取り除いてもらうため、医者に徹底的な精密検査をしてもらいました。
そして内科医にいわれ、両親は児童精神科医にガイダンスを受けました。
精神科医はハリーの母親も同じように身体的原因がはっきりしない頭痛やめまいをしばしば訴えている点を指摘してくれました。
そしてハリーは、「ストレスに対処するため、母親が行っている『秘密の方法』を見て真似したようだ」というのです。
実は母親のストレスの捌け口として現れていたものだったのです。
「心身症」には長い歴史があり、100年以上もの間、原因不明の身体症状がある患者に関する者浩が数多く出されてきました。
このような病気はひとまとめにして「ヒステリー」という診断が下されていました。
フロイトが診療所を始める時、一番多く治療しようとしていたのがこの苦痛です。
このような身体に現れた苦痛は、他にどのような手段を利用しても表現できない潜在的な心の問題(つらい記憶、無意識の葛藤、時には性的虐待)が身体に現れてきたものと見なされていたのです。
現在、この感情が原因で生まれる苦痛は「身体表現性障害」と呼ばれています。
私たちは、若い人たちの中に身体表現性障害の二つの主なカテゴリーを観察しています。
一つはハリーが示している、思春期になるまでは断然多い「転換性障害(ヒステリー)」です。
普通、この転換された症状(神経的・医学的症状と似た子どもの感覚機能や運動機能における欠陥)は、心理的葛藤やストレスにより引き起こされています。
ほとんどの転換性障害は、就学年齢の間に発生し、少年より少女のほうにほんのわずか多いようです。
一般に症状が現れる期間は短く、症状も一つか二つしかありません。
子どもはしばしば体の衰弱、時には麻痺を訴えます。
歩いたり、話したり、見たり、聞いたりすることが困難になる子どももいれば、「おかしな気分」や手足の感覚の喪失を訴える子どももいます。
このような症状よりはまれですが、実際に席から立ち上がれなくなったり、本当の発作に襲われたように見える症状を示す場合もあるかもしれません。
恐らく症状の中で一番多いのが「痛み」です。
痛みは子どもの身体のどの部分にも発生しますが、最も多いのは腹部です。
そのため腹部の痛みの場合は「転換性障害」とは独立した症候群と考えられています。
しかし腹痛を感じている子どもは、その他の症状も一緒に訴えるのがふつうです。
その最も典型的なものには、めまい、矢神、軽い頭痛、吐き気、嘔吐、胃痛をはじめとする不調感が挙げられます。
身体表現性障害の二つめのカテゴリーは、「身体化障害」と呼ばれています。
この障害が現れるのはたいてい思春期の若者で、思春期前の子どもが発症することはめったにありません。
慢性的で、体の数ヶ所に痛みが現れます。
転換性障害と比べ、この障害はかなり長引き、再発しやすく、症状も数多くあります。
フロイトの時代から、身体表現性障害がある子ども(普通、思春期前の年齢の転換性障害)は、自分で表現したり、直接捌け口を作れなかったりするために生じる感情的ストレスに苦しんでいることが明らかにされています。
このストレスは、家族の死、性的虐待、身体的虐待、無秩序な家庭環境、同じように多くの身体的不満をもつ親や兄弟との対立、
または親とのひそかな共謀関係(例えば、子どもには不適切な一身上の細かなことを打ち明ける親)などの結果として生まれているのかもしれません。
実際にあった身体の疾患が治った後も、転換症状として後遺症が残ってしまう場合があります。
例えば腕を骨折した時の痛みが治った後も消えなかったり、胃腸炎のある子どもは病気が治まった後もずっと腹痛を感じるかもしれません。
子どもは他の手段では表現することができないと思っている心の葛藤を示すため、わざとこのような「正当な」痛みに襲われるのです。
なぜ身体表現性障害にかかる子どもとかからない子どもがいるのか確かなことはまったくいえませんが、潜在的な遺伝子的素因があったり、
または子どもが同じような転換性障害を示す親からその行動を学んだりしたのかもしれません。
心的外傷や虐待は、転換性障害にかかる確率を増やしてしまう傾向があります。
また、ある子どもは、自分の気質または生まれてきた文化やサブカルチャーなどそれが何であれ、そこで感じている束縛のせいで、他の子どもより自分の感情を素直に表現できずにいます。
お気に入りのブックマーク・RSSに登録 »
関連記事
サイトマップカテゴリー:子供の心の障害
トラックバック(0)
http://blog.shigoto-shikaku.com/mt/mt-tb.cgi/5949


