子供の精神分裂病
精神分裂病の治療・看護には、一人ひとりの分裂病者をいかに理解し、いかにかかわりをもって働きかけてゆくかという個別的な視点が不可欠である。
分裂病を類型化し治療技法をマニュアル化することで生じる、本質的理解の欠落への恐れから、本書ではできるだけ多くの症例を呈示し、それに沿いながら叙述的に記載することが心掛けられている。
また、日々の実践に具体的に役立つよう、リスクマネージメントの際意識化しておく必要のある項目が加えられ、治療・看護にあたる際のキーポイントが、各項目の最後にコンパクトにまとめられている。
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「幼かった時には、よく空想の世界で過ごしたものです。
でも、それは素晴らしい出来事を頭に思い浮かべていたにすぎません。
でも息子のアンディーは、空想の世界から抜け出せないんです。
息子のいっていることにはほとんどついていけません。
繰り返し意味のない音声を発するだけのこともあるんです。
息子は空飛ぶ生き物がずっと見えるといっています。
それに他の子どもとどうやって遊んだらいいのかわからないようなんです。
よその子どもたちは息子のことを『気味が悪い』といっています。
息子の先生は精神分裂病かもしれないといっていますが、それはどうでしょう?
まだ7歳なんですよ!」
幼い子どもはほとんど例外なく、しばしば現実とほとんど関連のない手の込んだ内容の空想を思い浮かべています。
彼らは論理的に、または系統立てて考えるのが困難なのか、
予告(または意味)もなく話題を次々に変え、私たちにはまったく根も葉もないように思える考えを抱き続けているかもしれません。
このような「突拍子もない」考えや振る舞いは、子どもの様々な発達段階に対するまったく正常な取り組みの一環であり、たくさんの、独創的な想像力があることを示す健全な証拠なのです。
7、8歳までに、ほとんどの子どもは論理的にものを考えるようになります。
相変わらず、私たちにとっては非現実的という印象を受ける様々な思考、迷信、空想も抱き続けているかもしれませんが、普通、かなり現実に立脚して物事を考えられるようになります。
あいにく、幻想にずっと悩まされていたり、治らない思考障害や知覚障害に悩んでいる子どももいます。
アンデイーの父親のように、親たちはいろいろな領域でその証拠を目撃しています。
例えば、不合理でとりとめのない会話、とほしい対人関係、学校での困難、衛生面への無関心などがあります。
このような子どもは重度の障害(精神病)にかかっていて、現実を把握する能力が根本的に損なわれているのかもしれません。
このような障害の一つが「精神分裂病」です。
一般に、精神分裂病は思春期後期か成人期初期に発症します。
5歳以下には珍しく、思春期以前の子どもにも幼児とほぼ同じくらいまれな病気です。
しかし、最近、精神分裂病になる子どもに関する精神医学の論文が増えています。
成人の精神分裂病と同じように、この障害をもつ子どもにも幻聴・幻覚がありますが、
子どもの場合には頭の中に奇妙な声が聞こえてくるより、奇妙なものを見る確率のほうが高くなります。
精神分裂病の子どもは、両親についてひどく不合理な考えを抱くことが多く、怪物や幽霊を見たり、自分に危害を加えたり、
親にお仕置をされるような行儀の悪い振る舞いをさせるよう仕向けている幻覚(時には幻聴)を体験してしまうかもしれません。
子どもは空気や食べ物に毒が含まれているとか、他人や動物が自分を見ていたり、陰謀をたくらんでいたりするといった被害妄想に陥ります。
このような幻想は、不安、動揺、パニックをしばしば引き起こし、子どもは暴力をふるったり、自殺行為をしてしまうこともあります。
子どもの考えは(思考障害と肝をつぶされる幻覚とがかみあった結果)ひどくまとまりに欠けていて、子どもの話や論理についていくのが困難になるでしょう。
感情と言動が一致していないようにも見えるでしょう。
子どもは笑ってはいけないところで笑い、不可解に見え、なんら感情がないように見える解維性の情緒反応を示します。
多くの分裂症の子どもが奇妙な動作やしかめっつらをし、それに伴う奇妙な癖、不安な表情、儀式的な仕草が一層彼らを奇怪にしてしまいます。
また、いわゆる「陰性症状(訳注・著しい無気力、会話の困難、情動反応の鈍磨など)」が、感情を著しく乏しくしています。
このような子どもは楽しみがあるようにはまったく見えず、ほとんどしゃべることもなく、自分の前方をうつろな表情で眺めます。
また社会から完全に引きこもっているといっていいほど、どんな人とも接触するのを避けようとしているように見えます。
精神分裂病が発症する原因が何かわかっているわけではありませんが、少なくとも様々な生物学的・遺伝学的影響が原因の一端になっているようです。
最近、精神分裂病の人の脳(特に皮質部分への血液の流れ)の研究から、「脳室の拡大」という脳の構造の異常に関する情報が提出されています。
研究では、神経伝達物質の異常が原因かもしれないということも指摘されています。
最近まで、精神分裂病に関する調査のほとんどは、患者の家族におけるコミュニケーションのあり方に焦点が絞られていました。
すなわち、精神分裂病を引き起こす恐れのある矛盾、
つまり「二重拘束的コミュニケーション(訳注・同時に相容れない指示が与えられるようなコミュニケーション)」
のような患者に不安を生み出す現象が主に研究されてきたのです。
また、社会経済的状態、離婚、片親をはじめとする環境的要因も研究されてきました。
精神分裂病は、子どもの発達障害や学習、注意、会話、行動などの障害や問題にもしばしば関連していることがわかっています。
実際、分裂病が他の障害に見えてしまうことも多いので、専門家は精神分裂病とその状態や症状の似ている他の症候群とを区別しなくてはなりません。
分裂病に類似した症候群には、知的障害、うつ病、躁病、ADD(注意欠陥障害)、会話や言語の障害、自閉症、行動障害、そして場合によっては発作や強迫性障害があります。
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